チェンジ type R
 震える手をギュッと握り、強引に震えを押さえつけた。

 重ねた手と、その中に握られている携帯電話。
 この中には二通りの未来が入っているのだ。
 その未来とは、私だけではなく――隼人くんの未来までも含まれてしまっている。

 これは……自分だけの問題ではないのだ。 
 
 事態がさらに混乱するのではないかという不安と、このメールによって事態は少しは良い方に向かうかもしれないという希望。
 相反する二つの感情の間で――私の気持ちは瞬間的に揺れ動いていた。

 このメールは絶対に開かないといけない。今は……私のエゴで見れていないだけなのだ。
 そうなのだ、どのような状況を巻き起こそうとも、このメールを見ないことには事態は何も進展しないのだ。
 もしも、この『入れ替わり』という事象が私と隼人くん二人の生命を脅かすようなものであったら。
 後で、「あの時にもっと早くメールを見ていれば」なんて事態が起きてしまったら。
 きっと私は後悔してもしきれないような事になってしまうのではないか?
 
 私は隼人くんの身体を乗っ取ってしまっていて、私の身体もまた誰かに乗っ取られている。

 その私の身体を使うことになっている誰か――それは例えどんな結果となろうとも知っておかなければいけない事なのだから。


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