チェンジ type R
 順を追って考えてみたのだ。この極めて奇妙な状況を終息させるために必要な事を。
 私は元の身体に戻りたい。隼人くんだって同じ、絶対に何があっても元の身体に戻りたいだろう。そして、私の身体の中に入ってしまった誰かも……元に戻りたいと思っているに違いない。
 きっと、この事態に関わってしまっている人間の気持ちは決まっている。

 だとすれば……だ。
 元に戻る方法というのは分からないが、しないといけない事は決まっている。
 全員が元の身体に戻るために――なすべき事。その手順だ。

 私に入っている人を、その人の元の身体に戻し。
 私の元の身体に私が戻る。
 そうして隼人くんにこの身体を返して――これでやっとこの奇妙な事件は一件落着と呼べるのだ。

 そのために、私の身体に入っているのが誰なのかを確かめないといけない。
 でなければ、どうやってその人を元の身体に戻すか、という段階が終わらないのだから。

 まだ、肝心な部分は何一つとして分かってはいない。
 しかし、それを考えることは私の決意を固めるための……儀式のようなものになっている、と感じた。
 それが証拠に、つい先ほどよりも強く、

――早く、一刻も早く元の身体に戻りたい。

 私の偽らざる気持ちが、混乱でドロドロになりかけた心の内から浮かび上がっていた。

 不安に負けている場合ではないのだ……。
 やっと完全に震えが収まった手の中にある、携帯に着信したメールを……私は開いた。

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