チェンジ type R
 もう、このままずっとバスは来ないんじゃないか――。

 そう思えるほど長い時間を費やしたような気分を味わった後、やっとバスは到着した。
 バスの姿が見えたと同時にチラっと見た時計の中では……バスは時間通りに到着している。
 本当に、この時計は壊れているんじゃないか?
 そんな疑問が沸いてくるが、周囲のバス待ちをしていた人はいたって普通の顔をしている。
 これほど『待たされた』という気持ちなのは、どうやら私だけのようである。

 バスは目の前で停車し、プシューっという音を響かせながらドアが開く。
 客席に繋がるステップを登り『光が丘方面~日出台行き』のバスに乗り込む。
 ……が、一段目のステップを登り、一瞬だけ私の歩みが止まる。
 
――怖い、怖いのだ。

 あれだけ待っていたはずなのに……バスに乗り込んでしまうのが怖い。
 このバスに乗って、座席に着いたら――。

――私の傍に居る隼人くんが本物か偽者かが分かってしまう。

 それが何よりも怖いのだ。
 この隼人くんが、私の生み出した幻覚だったとしたら。
 ……私は一人でこの難問に立ち向かわなくてはならなくなる。

 その恐怖で足が止まったが、後ろに並ぶ他の乗客に急かされるようにバスへ乗り込む。

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