チェンジ type R
 バスの中を歩きながらも、その歩みは重く、進まない。
 今さら……今さら一人でなんて立ち向かえない。
 そんな思いが、私の歩くスピードになおのことブレーキをかける。

 いかに幽霊であろうとも、隼人くんが傍に居る心強さを知ってしまったのだ。
 隼人くんが実在の人間であろうと、存在しない霊であっても心強さは変わらない。
 どんな時でも私が混乱に陥っても、必ず冷静にさせてくれた。
 だからこそ、どんな混乱しそうな状況でも、隼人くんさえ傍に居れば心のどこかに『安心感』があった。

 それが――無くなってしまうなんて!

 一人になってしまえば、この先にある困難を乗り越えることなど不可能に思えてくる。
 『何とかなる』と思っていた元の戻るという目標も……果てしなく遠いものであるように感じてきた。

 不安に歩みが遅くなりながら、バスの後部から乗り込んだ私は運転席の方に向かって行く。
 運転席の背後に一人掛けの椅子が空いていることを確認する。

――あそこに座れば……。

 窓に向かっていれば、誰からも隼人くんと会話していることは悟られないだろう。
 しかし、そこに座れば……私を悩ませるこの疑問に……答えが出てしまうのだ。

 ……隼人くんが、私の生み出した幻覚ではなく……どうか本物でありますように。

 一縷の望みを込めて、私は……座席にそっと腰を下ろした。
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