チェンジ type R
(どうした? 眩しかったのか?)

 目を開くと、窓の中には隼人くんが居る。
 さきほどと変わらぬ、少し透けた、でも幻覚とは思えないほどの存在感で……。

 隼人くんは私を心配そうに見ている。
 その心配から出た質問の言葉に、私は小さく首を横に振る。自分でも表情が固くなっているのが分かるくらいに、頬の辺りの筋肉が緊張しているのを感じる。
 俯いてしまうと、隼人くんの声が聞こえなくなるので……顔は上げたままだ。
 
 次に隼人くんの声が聞こえなくなったら、きっと私は不安で押し潰されてしまう。
 こうして、隼人くんが見えるだけで……自分の考えが間違っているのではないかと思える。
 隼人くんは、まだ少し心配そうな表情で私を見つめている。

 何でだろう、あれだけあった不安が。
 隼人くんの姿を見た途端に減ってしまっているのが分かる。
 不安に潰れてしまいそうだった私の気持ちは、隼人くんの声を聞いただけで落ち着きを取り戻しつつあった。
 まるで、空気が抜けかけたボールに空気入れで中身を補充したかのように、萎みかけだった私の心が元通りに膨らんでいくような気分だ。

 どうして、どうして隼人くんの声を聞いただけで……こんなに安心するんだろう……?
 まだ、私の疑問は何ひとつ解決していない。
 しかし、隼人くんを目の前にするだけで解決に向けて一歩踏み出すための勇気が自分の中に湧いてきているのを感じていた。
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