チェンジ type R
 何も考えずに、メールをしている隼人くんをニセモノと決め付けてしまうことも可能だった。
 でも、メールを見た瞬間に私の中に生まれた疑問。それを看過することが出来なかった。
 なぜならば、私の目の前に居る隼人くんが、私の生み出した幻覚だったとすれば――それは、私たちが元の身体に戻るための『障害』に過ぎなくなるからだ。

 私にとって都合の良いことだけを言う幻。

 その幻が言う通りに行動したところで、元に戻るという目的に近付けるはずもない。
 自分にとって都合の良いことだけを実行したところで、事態は何も解決しないだろう。
 ならば、ここで隼人くんが本物か否かを確かめることは、これからの私にとっては重要な意味がある。

 本物ならば、これまで通りに二人で元に戻る方法を探っていく。
 幻ならば……私はこれから元に戻る方法を一から探り直さないといけない。

 幽霊になっていても、全然焦らない隼人くん。
 鏡の中にだけその姿を現し、姿が見える時だけ声が聞こえる隼人くん。
 私が混乱すると、必ず冷静に引き戻してくれる隼人くん。

 私の……理想の彼氏像に……極めて近い隼人くん。

 疑おうと思うと、いくらでも疑える要素が増えていく。
 このまま、疑いばかりが増えて、隼人くんを信用できなくなってしまう前に――。

――隼人くん、君さ幻覚とかじゃないよね?
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