チェンジ type R
――え!? いや、だからさ。本物はこのメールの人で、っていうとはアナタは……ホンモノじゃないでしょ?

 未だに『自分が本物』というアピールを続ける幻覚に反論してみる。
 リアルに幻覚を見る人の行動というのはこんなものなのだろうか?
 自分の脳が作り出したモノのはずなのに、それに反論されて、さらにそれに反論。

 もはや……何がなんだか。物事に筋道というものが立っていない。

(だから! メール相手の名前がどうした!? 俺以外にも『隼人』なんて名前はいる!)

 だが、幻覚の隼人くんはなおも反論してくる。
 しかも、まっとうな理屈を以ての反論である。

 うーん、それもそうなんだけど……。
 実際に私のお父さんの名前だって『隼人』なわけだし。
 ありふれているわけでも無いだろうけど、そこまで珍しい名前でもないだろう。

 でも、私が『入れ替わった』人の名前が隼人で。
 空っぽになった私の身体の中に入ってきたのが、これまた『隼人』。
 これがさらなる第三者とか……偶然ではありえないでしょ。

 お父さんの名前が『隼人』だってよしみで隼人くんの中に入ったの?
 まるっきりアカの他人なわけで。それはあり得ないでしょ?

 そりゃあ、この入れ替わりだって十分にあり得ないことなんだけどさ。
 そこにさらにあり得ない状況が起こるって、そこまで行くともはや天文学的な確率になってきやしないか?
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