チェンジ type R
――ほら、早く自分を幻覚と認めちゃいなさいよ。

 何だか可哀想になってきたが、それでも消えてくれないので仕方なく引導を渡す。
 ここまでハッキリ言えば、いかにしぶとい幻覚でも消えてくれるだろう。
 まるで犯行を否定する犯人を追い詰めている刑事のような気分だ。
 まあ、ドラマのようなドラマティックさには欠けていて、刑事というよりは万引き犯人を白状させているコンビニの店員のような気分なんだけど。

 私自身がこの隼人くんを幻覚と認定したのだ。
 脳内で決着さえ付けば、自ずと幻覚はナリを潜めるだろう。
 これで問題の一つがやっと片付くわけか……。

 と、思ったんだけど。
 それでも消える気配がまるで無い。
 この幻覚、とても頑固だ。風呂場についたカビのように頑固だ。
 何度こすって落としても、その下から湧き出てくるようなしつこさ。

(だーかーらっ! 俺は本物なんだって! どうやったら信じるんだ!?)

 うーん、この期に及んで。しぶといにも程があるんじゃない?
 アナタこそ、どうやったら自分を幻覚だと認めてくれるのか。
 ここまで私は一生懸命に説得して、円満に別れを告げようとしてあげているというのに……。

 大体だよ、この世に霊なんて存在するはずがない!
 そんな非常識なことはオカルト雑誌が認めても、私と某教授が認めない!!
< 95 / 113 >

この作品をシェア

pagetop