チェンジ type R
 そもそもだ、『入れ替わり』にしたって十分に非常識な話だ。
 そんなもの、お話の世界でしか見たことも聞いたこともない。
 本当に非科学的で、笑い話にもならない。
 
 私だってお父さんの小説の中で入れ替わる小説も読んだことはある。

 その話も、ある日突然に女の子の身体が見ず知らずの他人と入れ替わり、元に戻るまでにドタバタを繰り広げるようなモノだった。
 現在の私に起きているのとそう大差は無い。事実は小説よりも奇なりとは言い難い。
 小説の方がよほど奇怪な世界だ。

 そういえば……あの小説はどんな話の展開をしてたんだろうか?
 何故か思い出せない。
 もっとしっかり読んで内容を覚えておけば良かった、少しは参考になったかもしれないのに。

 あの小説……結末はどうったのか?
 最後には元に戻れていたのだろうか?
 身内が書いた小説だから、適当に読んでしまっていて……タイトルも結末も思い出せない。

――あ、そうだ!!

 隼人くんが幻覚か、本物かの区別をつける方法があるじゃないか!
 私が分かってないことを質問してみればいい。
 そうすれば、ここに居る隼人くんが本物だと分かるんじゃないだろうか?

 丁度、隼人くんはお父さんのファンだと言っていた。
 私が生み出した幻覚だから、そう言うのは当たり前かも知れないけど。
 私が忘れてしまっている『入れ替わりモノ』の小説のタイトル。
 これを言えるならば、お父さんのファンだし本物で、私が生み出した幻覚なら答えられないはず……!
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