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楓との時間
私は自宅に帰ってからというものの
また地獄の生活を再開していた
「俺細い子好きやねん 」
楓の言葉が
脳内でリピート再生
次いつ会えるか分からなくて
少しでも気を抜いてしまったら
すぐに太ってしまいそうな気がして
なかなか過食嘔吐をやめる事は
出来なかった
日に日に右手には
吐きダコが増えていった
変わらない体重
たった0.1キロ増えたか減ったかで
左右されてしまう自分に
とてつもなく苛立ちを覚えた
やめたい…気持ちはあるけど
楓に細いね、って言われた事を思い出すと
なかなかやめれなかった
毎晩毎晩
涙を流しながら、こっそりトイレで
お腹に詰めたものを無理矢理吐き出す
お腹が空いているのは辛いけど
吐いた後の空腹感はなぜか心地の良いものだった
多分食欲が満たされた後だから
そんな生活を続ける事
1ヶ月ほど後に
私は初めて楓と大喧嘩を
することになる
そう、あれは冬が迫ってきている
秋の終わり頃のお話です