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-楓side-
いやいやおかしい……
どうしてこうなったんや!
とりあえずはよ着替えな…
俺はせかせかと着替えを済ませ
ベッドの方へ恐る恐る近づいてみる
「あーっ!もうっ遅いよぉー! 」
そう言って眉をへの字に曲げながら
床に座り込んでる女神
机に目をやると
綺麗に空っぽの酒の缶が並んでいた
あちゃー……
俺は頭に手を当てて
やれややと言わんばかりだった
「おい、飲み過ぎや
立てるか?寝るで? 」
「んー、立てれん…抱っこ…… 」
「おいおい…そんなんなるまで
呑むなや……ほら、俺の首捕まれや 」
そう言って俺は女神の前にしゃがんだ
……が、
何故か自分から抱っこをねだった本人が
顔を赤らめてそっぽを向いている
なんやねんこいつ……
自分からねだっておいて
恥ずかしいんかいな……
「ほら、はよ 」
「わっ分かってるわよぉ… 」
顔をそっぽに向けたまま
女神は俺の首に腕を巻きつけてきた
「よし、行くでー? 」
「んー、 」
「よいしょっ 」
俺は女神を抱っこして
ベッドに端っこに下ろした
「ふぅー、もう寝るで?
お前もはよ寝ろや 明日起きれんなるで? 」
「うー……す…… 」
女神はなにか言いたげに
口をモゴモゴさせてるが
声が小さくてまったく聞き取れへん
「どしたん? 」
「すき……… 」
女神はベッドの端っこで
縮こまってる
今…俺にすきって言った?
とてつもなく小さい声だったが
聞き間違いではないと思う
りんごより赤い顔を必死に
隠してる……
……反則 やろ
「俺も…好きやで? 」
言えた。
心を曇らせていたものが
こんなたった一言で
晴天になった
でも女神が言ってくれなかったら
俺は一生言わずに
後悔してただろうな
俺も好きだと言ってから
小さくなっていた女神はさらに縮こまっていた
こいつ可愛いとこあるよな
そんな事を思っていたら
俺は女神を押し倒していた
「好きやで… 」
そう言いながら強く抱きしめた
俺だけの女神にしたい…
そんな欲をなんとか抑え込みながら
俺は女神の寝顔を見つめた
抱きしめられて安心したのか
すぐに寝てしまっていた
俺は女神を身体で包み込むように抱きしめながら
眠りについた
安心という心地よさのなかで
眠りについたのは
どれくらいぶりだろう…
そんな事を思いながら。