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俺は女神とデパートを出るなり
する事なかったし


長時間外に居れば暑くて
熱中症になりそうだし……










「なぁ、一旦家戻っていい? 」



「ん?家って? 」






俺の顔を見上げて
キョトンとしている

あー…






「俺の家、こっからすぐやから 」






ますます目を丸くして
キョトンとしているこいつは
男の家に入るのがそんなにも珍しい事なのだろうか?




いや…それは……ないか。







「暑いし、行くとこないし
休憩ってことで 」



「あー…!うん、いいよ!行こっかっ! 」







家へと向かっている最中
女神のソワソワしてる顔は絶えなかった




なにをそんなにソワソワする事があるんだろうか…











「ついたで? 」





「ひゃっ! あっ! えっと! わーいっ? 」









…なんだこいつは
一発喝でも入れてやった方が…






かなり驚いたのか
俺が話しかけたらウサギみたいに
飛んでた








「ほら、いくで? 」





「ははははい… 」





「なんで敬語なん…?
きっしょ 」






あ、やべ
言い過ぎたかな




けっこう伸びた前髪の隙間から
女神を見ると









「えへ…ごめん…… 」









あれ、
怒るもんだと思っていたら







こいつの喜怒哀楽
具合には本当に疲れるな、








「別に、
鍵開けるからこれ持ってて 」






「任せなさーいっ! 」










俺は慣れた手つきで
家の鍵を開けた








ーガラガラッ






「ただいまー 」







シーン..。










あ、そういや今日誰も居らんかったわ







「おかえりなさーいっ 」





一緒に玄関に座って
靴を脱いでる女神が
急にそんなこと言いだした









なんでやろな
別にたいした事じゃないけど

心が少し暖かくなったんだ、








もっと、もっと
女神と居たい



けど失った時に
自分が傷つくのも怖い




臆病だよな俺




女神はまっすぐに
俺を見てくれているのに




俺は女神に何をしてあげられるだろう










「ーーちょっと!
多田!聞いてる!? 」








「あ? 悪い、聞いてなかった
なんやった? 」







「あーもうっ!ばかなすび! 」








「俺の部屋上やから 上行くで 」








色んな事を
考えすぎて頭アホなりそ






無理やり打ち消して





階段の方へ女神の手を引いた

















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