手にしたものは?〈短編〉
違うよ、華乃が可愛かったからだよ。
冗談でいいからそう言って?
頬にあった大樹さんの手はすっと離れて、顔が険しくなった。
「ごめん…っ」
大樹さんは、私の希望通りには答えてくれなかった。
私の瞳を見てくれなかった。
「あ…ははっ。そ…だよね。大樹さん彼女が大好きなんだよねっ。」
無理矢理笑った。
本当は泣きそう。
「華乃っ…俺…っ
「も〜大樹さん!危うく好きになっちゃうとこでした!危ない危ないっ…」
大樹さんが何か言いかけたけど、聞きたくなかった。
何もなかった事にしたかった。
恋した事を
なかった事にしたかった。
拒絶されたくなかった。
私はまた、怖くて逃げた。
そうゆう事。