手にしたものは?〈短編〉
「華乃が他の誰かのものになるのは嫌なんだ。華乃は俺にとって特別で…」
大樹さんの顔が見えなくて…
私は今にも泣きそうだった。
「でも俺は彼女と別れるつもりがない。」
―…
全身に回っていた痛みが、心臓だけにズシッと集まる。
きゅぅってすごい痛くなった。
「だから…っ
「それでもっ、いいっ…」
私は振り返って思い切り大樹さんに抱きついた。
「華乃…?」
「彼女と別れなくても、…恋人になれなくても…いいのっ…、そばに居させて…」
大樹さんが切なそうに瞳を私に向けてる。
真っ黒な瞳に私が映ってる。
吸い込まれてもいいと思った。
涙が止まらなかった。
初めて知った。
本当に欲しいものを手に入れたい。
何でもいい。何でもする。
どんなことをしても
大樹さんが欲しい。