負け犬も歩けば愛をつかむ。
「その好きな人って、本当に電話で言ってた“小雪さん”って人のことなんですか?」

「そうだと思うよ。片想いだって言ってたし……」



真琴ちゃんも園枝さんも、まだ半信半疑な様子。

私は悩みを吐き出して少しはスッキリしたけれど、言葉にして再確認するのはやっぱり辛い。

なかなか元気が出ず、もそもそとご飯を咀嚼する私の背中を水野くんがバシンと叩く。



「そんな気落とすなって! 片想いならまだちづにもチャンスあるじゃんか。これから振り向かせればいいんだから」

「そんな簡単に言わないでよね」

「いや、本当に。俺はちづにマネのハートを仕留めてほしいと思ってんだよ。あんなイイ男逃がしたらもったいねーって」



どうやら水野くんも、昨日の白和え騒動で大人な対応をしてくれた椎名さんに惚れたらしい。

専務に言われたことは、椎名さんとも相談して皆には内緒にしているけどね。



「そうよ、千鶴ちゃん。諦めるのは早いわ。私も今度椎名さんが来たらそれとなく探り入れてみるから!」

「あは。ありがとうございます」



やる気満々の園枝さんに、微妙な心境で笑みを返す。

たしかに園枝さんなら他二人と違って、さりげなく情報を入手してくれそう。

でも、椎名さんの好きな人の話を聞いたところで、私は余計落ち込むことになるのだけのような気がするんだけどな……。

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