負け犬も歩けば愛をつかむ。
記念パーティーの件が正式に決まったのは、それから二日後。
イベントのため料理の原価は高くなることを見越して、超過した分の食材費はメルベイユに請求することを条件に、本社は承諾したようだ。
「……というわけで、少し大変になるけど皆にも頑張ってもらいたいと思って」
「まぁ、やるって決まっちゃったならもうやるしかないわねぇ」
休憩中にやってきた椎名さんがそのイベントの旨を私達に説明すると、園枝さんが神妙な顔で、けれど腹を括ったように言った。
彼女が言う通り、本社で決まってしまえばこちらが何を言っても無駄なのが現状。それはさすがの椎名さんでも同じだと思う。
こういうシステムも、きっと専務は嫌いなんだろうけど。
「当日は本社からもヘルプを呼ぶから、人手は心配いらないよ。メニューはいつもより質の高いビュッフェの方向で俺も考えるけど、皆の意見もちゃんと取り入れて無理のないものにするから、協力してくれるかな」
パソコンデスクの椅子に座る椎名さんが皆の顔を見回して言うと、水野くんが「もちろんっすよー!」と即答した。
「一応俺もホテルでやってた人間なんで、そこのメニューを思い出してみますよ」
「やっと涼ちゃん活躍する時が来たじゃん! 白和え騒動の汚名返上しなきゃねー」
真琴ちゃんの無邪気なツッコミにピクリと眉を上げる水野くんだけど、たしかにホテルでは豪華なご馳走を作っていただろうし、彼の経験が役に立ってくれるかも。