負け犬も歩けば愛をつかむ。
「ありがとう。期待してる」



水野くんに柔らかく微笑みかける椎名さん。

皆は知らないけれど、この人の首が懸かってるようなものなんだから頑張らないと。

私達だってやれば出来る。専務は“群れたがる弱い犬”とか言うけど、協力して何かを成し遂げるのが私達のやり方。

それでも成功するんだってことを思い知らせてやるわ!



「いい? 皆、絶対成功させるのよ!」



握りこぶしを作り、一人鼻息を荒くする私に、皆は「はーい」と生徒のように間延びした返事をする。

そんな私達を、椎名さんは終始穏やかな瞳で見つめていた。

そして、休憩時間も残り僅かとなった頃、園枝さんが突然こんな質問を投げ掛ける。



「そうそう椎名さん、これだけは聞いておかなきゃいけないんだったわ」

「はい、何でしょう」

「単刀直入に聞くけど……あなた、小雪って子が好きなの?」



その瞬間、皆が一時停止した。

園枝さんっ……、記念パーティーのことで質問があるのかと思ったらそれ!?

しかも『それとなく聞く』って言ってたけど、思いっきり直球勝負だし!


目を見開く私に、ぽかんとする水野くんと真琴ちゃん。

そして園枝さんに真剣に見つめられる椎名さんは、面食らったように数回瞬きをした。

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