負け犬も歩けば愛をつかむ。
「え……小雪って、何で名前知ってるんですか?」

「風の噂よ。でもそんなことは今はどうでもいいの。私の質問に答えてちょうだい!」



有無を言わさぬ園枝さんに、椎名さんは訳もわからないといった様子のまま口を開いた。



「もちろん好きですよ、小雪は」



──当然のようにさらっと答えた椎名さん。

あまりにも簡単に聞き出せたせいか、園枝さんも拍子抜けしたような顔をする。

やっぱりそうなんだよ……これで確信出来た。でも、十分予想していたこととはいえ胸は酷く痛む。



「……どんなコなんすか?」



私も気になっていたことを水野くんが聞いてくれた。私に気を使っているのか、少し躊躇いがちに。

すると、椎名さんはその彼女を思い浮かべたのか、とても優しい顔で微笑んだ。



「人懐っこくて、すごく可愛い子だよ。会ったら誰でも好きになるんじゃないかな」



そんなに魅力的な人なんだ……。それじゃ、私なんかがどれだけ自分を良く見せようとしたって敵うわけないよね。

でも、そんな愛おしむような目をされるとやっぱり辛い。

誰かを想っている彼なんて、見ていたくない……。

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