負け犬も歩けば愛をつかむ。

──翌日、私は見事に風邪をひいたらしい。

昨日雨に濡れたまま仕事をしていたせいか……。喉は痛いし鼻水ズルズルだし、体調は最悪。



「くしゅんっ! だぁーティッシュが手放せない……ずずっ」

「あらま千鶴ちゃん、鼻真っ赤だし声もガラガラよ?」

「明日パーティーなのに大丈夫ですかぁ?」

「ゔん……薬飲んでるし、明日にはもう少し良くなるといいんだけど……」



エプロンのポケットに入れたティッシュで鼻をかんでいると、水野くんが冷蔵庫を開けて何かを取り出してみせる。



「しょうがない。コレやるから早く治せよ」

「ありがと~、気が利くね……ってこれは私が買ってきたプリンでしょーが!」

「ノリツッコミ出来るから大丈夫だな」



何故か満足げに頷く水野くんだけど、それは椎名さんにあげようと思ってたいちごミルクプリン。

彼は昨日、『明日もなるべく寄りたいけど何時になるかわからない』と言っていたから、本当に私が食べちゃおうかな……。


昨日の九条さんが抱きつくシーンを思い出しつつ仕事を始めるも、ポケットティッシュはまだ朝なのにすでに二袋目に突入。

皆も心配してくれてるけど、明日は大事な日なんだから絶対休むわけにいかない。

今日は帰ったら速攻寝よう……。


そう思いながら、ぼーっとする頭で献立表をチェックしていると、厨房に備え付けられた電話が鳴った。

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