負け犬も歩けば愛をつかむ。
「日本語がわからない外国人のような顔をしてるぞ。……まさか用意していないのか?」

「あの、請求書の話は覚えてます。でも、それは今月の締日まででよかったはずじゃ……」

「そう。その締日は明日なんだが」

「………………えぇっ!?」



一瞬、身体の不調も忘れて叫ぶように声を上げた。

たしかに、記念パーティーで超過した食材費をメルベイユに請求するから、その分の請求書を作っておいてくれと言われた。今月の締日厳守だということも。

でも、締日は月末のはずじゃ──



「あ゙ぁ!!」

「……忘れてたんだな」



目を見開き、再び叫び声を上げる私を見て、専務は眉間のシワを濃くして、盛大なため息を吐き出す。


そ、そうだ……私、重大な勘違いをしてた。

メルベイユの締日は十五日。月末締めの私達とは半月も違うんだわ!

だから気をつけるようにと言われていたのに……すっかり月末だと思い込んでた!!


パーティーが終わってからゆっくり作ればいいと思っていたから、まだ一切手をつけていない。

おおまかな金額は専務に伝えていたけれど、詳細な金額と品物を数種類の業者の伝票から抜き出して調べるのは、かなり時間が掛かる。

しかも、今日明日はパーティーの準備に追われて休憩がちゃんと取れるかもわからないくらいなのに、明日までに間に合わせなきゃいけないなんて、到底無理!!

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