負け犬も歩けば愛をつかむ。
サーッと青ざめる私に、頭痛がするとでもいうように額に手をあてる専務は、呆れたため息交じりに言う。



「どうりで。いつまでたっても持ってこないから確認してみたんだが、やはりそうか」

「す、すみません!! あの、明後日まで待ってもらうってことは可能──」

「なわけないだろう。出来たとしても待つつもりなんてない」

「ですよね……」



あなたが無慈悲な人間だということは重々承知しております……。

というか、今回ばかりは私がいけないってことも十分わかってますが……。

頭を垂れる私に、専務のお説教は続く。



「だいたい前以て準備しておけば焦らずに済むものを、後回しにするのが悪い。金を払ってもらえなくなって困るのは君達だろう? それにこっちにも都合があるんだ、期日を守らないなんて言語道断」

「は、はい、申し訳ございませんっ!!」

「もし間に合わなかった場合、僕がどうするか……君はわかっているよね?」



その一言に、頭からつま先まで全身の血の気が引いていく。

間に合わなかったら、その責任は椎名さんに──?

私の反応を見た専務は、嘲るように鼻で笑った。



「彼の厚意も、君のこの一件で無駄になるかもしれないな」



……どういうこと?

という私の気持ちを察したらしい専務は、おもむろに椅子から腰を上げながら涼しげに言う。



「彼はきっと気付いているんだろう。僕が君に意地悪をしているってことに」

「え……!?」

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