負け犬も歩けば愛をつかむ。
そろそろサラダから銀皿に盛り付けようとしていると、ここで椎名さんが助言してくれる。



「こういうのを盛り付ける時は、赤や緑の色のあるものを最後に盛ると見栄えがいいよ。まんべんなく散らせばどこから取っても均等に具材が取れるしね」



そう言いながら彼の手から盛り付けられるシーザーサラダは、少し工夫するだけで普段の倍綺麗に見えて皆が感心した。



「なるほど……いつもそんなふうに考えずに盛ってたなぁ」

「普段は忙しいから仕方ないよ。でも余裕がある時はやってみて」

「はい」



彼は他にも色々なコツを教えてくれた。

お皿よりも少し中心を高くして盛ると高級感が出せるとか、お皿の上に紙ナプキンや笹の葉を敷くだけでお洒落に見えるとか。

こういうことは私達よりも椎名さんの方が多くの知識を持っていて、さすがだなと思う。


そんな彼のアドバイスのおかげで、美味しい料理はドレスアップしたかのようにさらに華やかに仕上げられた。

レストランにも引けを取らない見栄えのそれを社員が集まり始めた食堂に運ぶと、周囲から感嘆の声が上がる。

メルベイユの社員さんが設置してくれた長いテーブルにずらりと並んだ料理は、まるでファッションショーのようにどれもが個性を主張していて、キラキラと輝いているように見えた。

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