負け犬も歩けば愛をつかむ。
料理を運び終えたら今度は皆に配る飲み物の準備。

各テーブルにビールとお茶の小瓶は用意してあるけれど、ジュースやワイン等は食堂に接している休憩コーナーで配ることになっている。欲しい人は取りに行くセルフサービスというわけ。


それは主に園枝さんと真琴ちゃんに行ってもらうことにした。

水野くんはローストビーフ担当、私と椎名さんはどちらも手伝いつつ料理や飲み物を補充するという、臨機応変に動く立場だ。

厨房の中では丸石さんと細長さんが、いつでも料理を出せるようにスタンバイしてくれている。


全員に飲み物が行き渡ると、総務部長の開会のお言葉から始まり、社長の挨拶へと続く。それが終わったらいよいよ会食の始まりだ。

なんだか緊張するな……。

皆が静かに耳を傾ける中、私の隣に立って同じように挨拶を聞いている椎名さんを見上げた。

その視線に気付いた彼は、私を見下ろすと穏やかに微笑む。

“大丈夫”という言葉がテレパシーのように伝わってくるようで、私は小さく頷いた。

──そうよ。準備は万端、料理の味もバッチリ。自信を持て、千鶴!


そうして始まったパーティーは。



「ちづ、取り皿が足りなくなりそー」

「ごめん! すぐ持ってくる」

「春井さん、ついでに細長さんにから揚げ追加って頼んでもらえる? あとそろそろピザも焼いてもらって」

「了解です!」



こんな調子でてんやわんやだけれど、不思議と忙しいほどきびきびと動けるのだ。

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