負け犬も歩けば愛をつかむ。
椎名さんの仕草一つ一つに黄色い声を上げる彼女達に、嫉妬の芽をムクムクと出し始めていると、どうやらそれが顔に出ていたらしい。



「ちづ、顔がヤバい」



彼女達がいる方とは反対側のテーブルで、ローストビーフを切り分けていた水野くんの耳にも会話が聞こえていたらしく、私を見て面白そうに笑っている。

しかもそこにはお肉をお皿に乗せた専務が。水野くんの仕事っぷりを偵察しに来たわね、この人。



「何か問題でもありましたか、春井さん？」

「い、いえ……！」



小首をかしげ、わざとらしく聞いてくる専務にぎこちない笑みを返す。



「専務、チーフは今あの彼女達にちょっと嫉妬しちゃってただけなんですよ」

「あぁ嫉妬……それは可愛らしい。でも、せっかくの綺麗な顔を歪ませてしまっては勿体ないですよ」



作り物のキラキラスマイルを張り付けた専務に歯が浮くような台詞を言われても、私には嫌味にしか聞こえない……。

専務は水野くんを毛嫌いしているはずなのに、なんか二人で和やかに話しているし。



「椎名さんはモテますからね、春井さんも気が気ではないでしょうに」

「そうなんすよ。でもマネは絶対浮気とか出来ないタイプだろうから、心配いらないと思いますけどね～」



もう二人で勝手に話しててください……と私が立ち去ろうとした、その時。

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