負け犬も歩けば愛をつかむ。
「浮気しなさそうな人に限って浮気するんですよ!!」



うわぁ、びっくりした!!

突然間に割り込んできた人物に、私達は一様に驚きで目を見開く。

一際目立つシャンパンゴールドのドレスに、今日はアップにセットされた髪、鳥の翼のようなつけまつげに縁取られた大きな瞳。

とにかくゴージャスなお嬢様、菅原さんのお出ましだ。



「す、菅原さん?」



微妙な笑みに変わる専務を無視し、彼女は据わった目で私をじっと見る。



「椎名さん、でしたっけ? たしかに誠実そうだけど、あのワイルドな風貌に大人の色気……女が放っておくわけないもの! 浮気の一つや二つや三つや四つするわよ!」



するか!!

……とつっこみたかったものの、専務の手前ヘタなことは言えない。

菅原さんは持っていたワイングラスを口に付け、見ていて気持ち良いほどぐいっと紅い液体を飲み干した。

やっぱり……軽く酔ってるのね、この子。



「あのさ、何でそんなふうに決め付けるんだよ?」



──はっ、マズイ!

不満げに言う水野くんに、あのひじき騒動が思い起こされ、ギクリとする私。専務も冷ややかな目で静観しているし。


……しかし、また菅原さんの逆鱗に触れるかと思いきや、彼女は何故かうるうると瞳を潤ませる。そして。



「だって……あたしの彼氏も浮気してるからぁ~~!!」



うわーんと泣き出す彼女に呆気にとられながら、私と水野くんは「……デジャヴュだ」と呟いた。


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