負け犬も歩けば愛をつかむ。
■二人の想いも天に届く
二時間程でパーティーは滞りなく閉会した。
料理も無事成功し、社長の挨拶を厨房から眺めていたらしい丸石さんと細長さんも、「よかったよかった」と満足げだった。
……が、私達の仕事はまだ終わらない。メルベイユの社員達が続々と会場を後にする中、こちらは怒涛の片付けで再び忙しくしていた。
「私、休憩コーナーの方片付けてきますね」
「あぁ、お願い」
洗浄や残った料理の片付けは厨房にいる皆に任せ、私はトレーを手に食堂と休憩コーナーへ向かう。
テーブルなどの片付けは週明けに行うようで、二次会へと繰り出した社員はもう誰も残っていない。
……と思ったら。休憩コーナーの壁に寄り掛かり、空のグラス片手に窓の外を眺める一人の男性がいる。
ぼーっとしちゃって、珍しい。
いつもなら自分から近付こうとは思わないけれど、今は少し話し掛けてみようという気になった。
「グラス、片付けてもよろしいですか?」
「あぁ……」
トレーを差し出すと、専務はまだぼんやりした様子でグラスを乗せた。
きっと、さっき社長が感謝の言葉を掛けてくれたことを思い返しているんだろう。
「……自分の努力を認めてくれる人がいるって、嬉しいことですよね」
「何だ、いきなり」
テーブルに残ったいくつかのグラスを集めながら言うと、専務は怪訝そうな顔をする。
私、思ったんだ。
専務はずっと、そういう存在が欲しかったんじゃないのかなって。