負け犬も歩けば愛をつかむ。
九条さんと付き合い出してから少しは丸くなるかと思いきや、まったくそんな気配はないもんなぁ……。
脱力しながら、颯爽と歩いていく専務の後ろ姿を見送っていると、同じ方から幸斗さんがやってきた。
専務とすれ違いざまに挨拶を交わし、柔らかな笑顔でこちらに歩いてくる。
それだけで私の心まで穏やかになって、あぁ、やっぱりこの人が大好きだ、と実感する。
「まだここにいたのか」
「ごめんなさい、少し専務と話してて」
「あぁ、彼もいたんだな。びっくりしたよ」
そう言うと、幸斗さんがじっと見つめてくるから、私は首をかしげる。
「どうかしました?」
「いや、また専務が変な気起こさないかなって少し心配になっただけ」
「ぷ、変な気って。そんなことにはなりませんよ! ああ見えて、専務は九条さんとラブラブみたいだから」
「そうか」
ケラケラと笑う私の手を自然と握り、優しく導きながら彼が言う。
「でも心配にもなるよ。いつも綺麗だけど、今日の千鶴は格別だから」
う……甘過ぎる。ぽっ、と頬に桜が咲いたような私は、口元を緩めながら俯いた。
さっき専務に言ったことは本心。
こんなふうに愛しい彼が笑いかけてくれて、私の手を取って、一緒に歩いてくれる。それだけで幸せなんだ。
自分なりの幸せを自覚して、おおらかな気持ちで、笑って日々を過ごせる──
そういう人が本当の勝ち組なのだと、私は思う。
脱力しながら、颯爽と歩いていく専務の後ろ姿を見送っていると、同じ方から幸斗さんがやってきた。
専務とすれ違いざまに挨拶を交わし、柔らかな笑顔でこちらに歩いてくる。
それだけで私の心まで穏やかになって、あぁ、やっぱりこの人が大好きだ、と実感する。
「まだここにいたのか」
「ごめんなさい、少し専務と話してて」
「あぁ、彼もいたんだな。びっくりしたよ」
そう言うと、幸斗さんがじっと見つめてくるから、私は首をかしげる。
「どうかしました?」
「いや、また専務が変な気起こさないかなって少し心配になっただけ」
「ぷ、変な気って。そんなことにはなりませんよ! ああ見えて、専務は九条さんとラブラブみたいだから」
「そうか」
ケラケラと笑う私の手を自然と握り、優しく導きながら彼が言う。
「でも心配にもなるよ。いつも綺麗だけど、今日の千鶴は格別だから」
う……甘過ぎる。ぽっ、と頬に桜が咲いたような私は、口元を緩めながら俯いた。
さっき専務に言ったことは本心。
こんなふうに愛しい彼が笑いかけてくれて、私の手を取って、一緒に歩いてくれる。それだけで幸せなんだ。
自分なりの幸せを自覚して、おおらかな気持ちで、笑って日々を過ごせる──
そういう人が本当の勝ち組なのだと、私は思う。