負け犬も歩けば愛をつかむ。

披露宴では、真琴ちゃんはサーモンピンクのプリンセスラインのドレスにお色直しして、とっても似合っていて素敵だった。

美味しい料理に舌鼓をうち、花嫁の手紙でもらい泣きし、感動の披露宴も無事終わった。


幸斗さんに「トイレに行ってくるから待ってて」と言われ、ゆっくり帰る支度をしていると、同じテーブルに座っていた水野くんが私を呼ぶ。



「ちづ、これやるよ」

「何?」



彼が引き出物の大きな袋から取り出したのは、セラフィンやビーズと共にリボンで巻かれた、立派なブロッコリー。



「これ、水野くんがキャッチしたやつじゃん!」



ブーケトスの男性バージョン“ブロッコリートス”で、見事水野くんの手の中に落ちた時は爆笑だったわよ。

でも、これを私にって!



「ブーケをキャッチ出来なかったちづのために、俺の心優しい気遣いだよ」

「……いらない」

「遠慮すんなって! ほらマヨネーズ付きだぜ」



最近メルベイユの社員の女子といい雰囲気になっている水野くんは、前にも増してテンションがおかしい。

無理やりそれらを持たされ苦笑いする私の肩をポンッと叩き、彼はにこりと笑う。



「ちづの花嫁姿も、早く俺らに見せてよ」



……あんた私の父親か。

と、つっこみたかったけれど。無邪気に私の幸せを願ってくれている彼の笑顔を見ていたら、笑いとともに違う言葉が出ていた。

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