負け犬も歩けば愛をつかむ。
──ドキン。

触れられた手首から彼の熱が伝わって、それは一気に心臓まで届く。

振り返って見上げた彼もまた私を見つめていて、その薄茶色の瞳から目が離せなくなった。


こ、これはどんな展開!?と、ハイスピードで思考回路を動かそうとするも、彼の手は私の胸元に伸びてくる。

……って、えぇぇ!?


身動きすることも出来ず、ただ彼の手の行方を見守っていると。



「これ、新品なんだ?」



……そう言って軽く持ち上げられたのは、クローゼットから引っ張り出した、あのストール。

私は訳がわからず目を丸くしたまま、カクッと首をかしげる。



「え……え? 何で……」

「タグが付いてる」



ぷ、と笑いを堪えながら、ぴらっと見せられたストールの端には。

ブランド名が書かれた小さなタグが、たしかに情けなくぶら下がっていた。



「ひゃぁ!?」



思わずすっとんきょうな声を上げた私は、恥ずかしさで顔に火がついたように熱くなる。

うそぉー!! なんたる失態……!!

まったく気付かなかった自分が信じられない。

ていうか、さっき私の姿をじっくり見てた真琴ちゃん達も気付いてよ!

……なんて、人のせいにしても仕方ない。



「恥ずかしすぎる……うぅ」



両手で顔を隠して俯くと、くくくと笑う声が頭上から聞こえる。

そして、何やら再びストールを持ち上げる彼を指の隙間から見てみた。

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