負け犬も歩けば愛をつかむ。
■可愛い部下にはおあずけせよ
駅前の大通りから外れて路地に入ると、隠れ家のようなレストランがひっそりと佇んでいる。
シックな外観が高級感を漂わせているけれど、意外とリーズナブルで家族連れやカップルにも人気のお店だ。
名前だけは聞いたことがあったらしい椎名さんを引き連れ、金色の取っ手を押して中へ入ると、ほの暗い店内ではR&Bが控えめに流れている。
店員さんに個室に案内されると、テーブルを囲んでメニューを広げる三人が待っていた。
一番奥に座る水野くんが顔を上げ、意味ありげな目で私達を見ながら笑う。
「お。やーっと来たよ、今日の主役が」
「お疲れ様。すいませんね、遅くなって」
「いえいえ、気にしないで! どうぞ座って座って」
相変わらず低姿勢な椎名さんを促す園枝さんだけれど……
おかしくない!? この並び方!
だって、私と椎名さんが座るように開けられた椅子の向かい側に、三人が並んで座ってるのよ?
椎名さんと隣に並ぶのはいいとして、目の前に三人がいるなんて……
絶対私達の様子をじっくり見て、面白がりたかっただけでしょう!!
……と心の中で文句をつけるも、椎名さんは特に気にした様子もないので、私も何も言わずに渋々座る。
席につくと、やっぱり同じ顔でニンマリと笑っている三人に、私は冷ややかな視線を送った。
けれど、そんなことは気にしない真琴ちゃんが私達にメニューを差し出す。