負け犬も歩けば愛をつかむ。
だけど今は、変なプライドばっかりが先立って、なかなか素直になれなかったりする。

椎名さんのことも、このまま想い続けていても無駄なんじゃないか、こうしている間にどんどん婚期を逃していくんじゃないかって、少し怖くもなる。だけど。



「でも、私も諦めたくはないです。久々に本気で好きになったから」



男性の外見とかステータスとか、色々な条件を気にしていたはずだったのに、椎名さんのことはそういう付属品は一切抜きにして好きだと思えたの。


もちろん彼の容姿だって素敵だし、運命的な出会いが意識するきっかけになった。

でもそれ以上に、穏やかで優しいところとか、言うべき時にはハッキリ言ってくれるところとか。無自覚で触れてくるところ……は、ちょっとドキドキするから困るけど。

でもとにかく、私は彼の魅力的な内面に惹かれたんだ。

それって、本気で好きだと言っていいでしょう?



「ここ数年なかなか恋愛出来ずにいたのに、その人にはすっとーんって簡単に恋に落ちたんですよ。あぁ、私が求めてたのはこの人だ!みたいな」

「運命の出逢いってやつか。俺も似たようなものかも」



でもその人には他に好きな人がいるっていう、私達ってとことん残念だ。

好きな人にこんな話をしていることもなんだか情けないやらおかしいやらで、私は彼と顔を見合わせて笑い合った。

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