負け犬も歩けば愛をつかむ。
……う、ん? あれ、私あのままカウンターで寝ちゃったんだっけ。
でも、なんか身体がふわふわしたものに包まれてて、すごくラク……。
「まったく……じっとしてられるわけないよな、この状況で」
この声、椎名さん? よかった、まだいてくれたんだ。
「こんな可愛い顔で寝られたら、どうにかしたくなるだろ。……油断するなって言ったのに」
……ん?
徐々に意識がはっきりしてきて、頬に何かが触れていることに気付く。
重い瞼をゆっくり押し開けると、鮮明になっていくのは天井らしき白い背景と、愛しい人の私を見つめる顔。
あぁ、頬に触れているのは彼の手か……
………………って!!
「えぇぇえ!?」
驚いてガバッと起き上がると、ベッドサイドに腰掛けている椎名さんが一瞬目を丸くして笑う。
「おはよう」
「お、おは、よ……えっ、朝!?」
「いや、さっき帰ったばっかりだよ。春井さんの家どこかわからないから、とりあえず俺の家に」
う、うそ! ここ椎名さんの家!?
キョロキョロと周りを見回すと、ここはカントリー調のクローゼットと小さな棚が置かれた、落ち着く雰囲気の寝室。私はそのベッドに寝かされていたらしい。
「ど、どうやって運んでくれたんですか……?」
「どうって、こう、抱っこしてだけど?」