君想い【完】
「純のあの傷はそうだったんだ。木のぼり中に引っかけて切ったんじゃなかったのかよ。」
「ごめんね。もう思い出しても仕方のない話だからさ。」
「昨日さりながあんな風になったのは、俺が腕を思い切り引っ張ったせいか?」
深く頷いてやった。
さりちゃんの事を何も知らないで、彼氏面している祥吾への悪意だ。
なんて僕は性格が悪いんだろう。
「あのとき助けてくれたのが、純だから中澤は純を見て、抱きしめられて落ち着くのか。」
「落ち着いても、それまでの記憶が一瞬消えて、僕以外周りの人が見えなくなって、いいように記憶が修正されるんだ。例えば、今のさりちゃんの記憶は昨日僕と2人で遊んでいたとかね。」
祥吾は頭を抱えた。
それもそうだろ。
彼女から昨日過ごした時間を抹消されたのだから。
「純しか落ち着かせることは出来ないのか?」
「今度祥吾がやってみる?多分無理だよ。」