君想い【完】
何人にぶつかったか覚えていない。ひたすら駅まで走り続けた。
「いってえな!くそガキ!」
何度もそう言われた。
でもそんな言葉は右から左にすぐに通り抜ける。
頭の中には昔のさりちゃんのありのままの笑顔がずっと浮かんでいた。
何も汚されていないまっすぐで純粋な笑顔が。
必死に走り続け、
駅に着くと僕はその場にしゃがみこんだ。
自分が悔しくて、情けない自分を罵倒したかった。
なにが味方だ。
なにがさりちゃんのそばにいるだ。
見ただけで逃げ出してしまうような奴に、さりちゃんだって味方でいてほしいなんて思う訳がない。
少し離れた場所に行こうがさりちゃんはさりちゃんだろう。
そう自分に言い聞かせた。
あと一回。あと一回さりちゃんの後を追う。
もうなにを見ても後悔はしない。
なにを見てもさりちゃんを信じよう。
そう心の中で決めた。