君想い【完】


電車に乗ると発車までの間、さりちゃんはメールを打ち始めた。

誰に打ってるのかは分からない。
器用にボタンを打つ姿はすごく悲しかった。


さりちゃんの周りだけ色がない。


たくさんの人が電車の中で、様々な色を出している。


買い物帰りで今日買った服の会話をしていたり、
テーマパーク帰りのカップルがデジカメを見ながら今日の思い出話にひたっり、
仕事で疲れたサラリーマンが眠っていたり。


でもさりちゃんは何を思っているのかも、なにを考えているのかも分からない。
誰も入り込めない空間を漂わせていた。


少し怖い。


僕のジーンズのポケットで携帯が振動した。

昔さりちゃんにもらった飲み物のおまけに付いてきたストラップがポケットから出した拍子に揺れた。

-メール1件 FROMさりちゃん-

携帯の表示を見て急いで受信ボックスを開いた。
絵文字のあまりついていないシンプルなメールだった。


純は、あたしが何してるとかもう気が付いているかもしれない。
それかみんなの噂を信じて体売ってるとか思ってるかもしれない。
でも、今あたしが夜行動してることには意味があるんだ。
だから今は幼なじみの純にも言えない事だけど、
いつか分かることだから心配しないで。

こないだ純が駅であたしのこと待ってくれてたの分かったよ。

ありがとう。

さりな


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