君想い【完】
「純!一緒に帰ろう。カラオケ行くんだけど!」
絵美や仲の良い連れに誘われた。でもさりちゃんが気になって一度断った。
窓の外を見るとさりちゃんが駆け足で帰って行くのを見て
僕はカラオケに行くことにした。
さりちゃんは今日も都心へ向かうのだろう。
うちのクラスは学年で一番仲が良いと有名だ。
文化祭も体育祭もお祭り騒ぎだった。
連れの男女9人で盛り上がるのは、
最近さりちゃんの事で悩んでいた僕には気が紛れた。
絵美は歌が上手い。
絵美が歌う時は一番盛り上がる。
3時間ほどバカみたいに騒ぎ倒してカラオケ屋を出た。
みんなが気分も上がっている時に、
ガラの悪い奴らとばったり会った。一瞬静まりかえり空気が凍った。
黒塗りの外車から、スーツを着た同じ年、もしくは2個上くらいかの女が出てきた。
その一部始終をみんなで見入っていた。
「ねえ、ここであってんの?すんごい何もないとこなんだけど!」
わがままそうな女は大きい声で話しだした。
お嬢様かどこかのお偉いさんの娘か、そんな雰囲気だった。
「すげぇわがままそう!」
「絶対友達になりたくないよ~。」
「俺も彼女にしたくない。」
みんなが小さい声で話し出した。
「ねえ!あんた達!中町ってどの辺?」
「え?俺達ですか?」
「そう!どこ?」
「純んちの方じゃね?」
「う、うん。あの信号まっすぐ行くと住宅街に入るんですけど、その辺りが中町です。」
「あっそ!ありがと!」
あんな平凡で何もない住宅街に、あんな黒塗りの外車が2台も来たらみんな驚いてしまう。
変な女と周りにいるガラの悪い男達。全員スーツで僕の近所を回られたらみんな家の外を出なくなるだろう。
黒塗りの外車は僕たちの前から消えた。不思議な光景だった。