君想い【完】
「あれ絶対ヤクザでしょ?」
「怖かった。」
そんな会話がずっと繰り広げられていた。僕はあんまり周りは頭に残っていなかった。
あの不審な女しか印象に残っていなかった。
なんで僕の住んでいる町に用があるんだろう。
17年間、さりちゃんとの思い出の詰まったあの町に土足で踏み入れられた気分ですごく嫌気がさした。
僕が帰る頃には黒塗りの外車はいなかった。少し安心して僕は家路についた。
カーテンを開けてまちの様子を伺ったが、車の走ってる様子はない。いつもと変わらない静かな町並みだった。
ふと隣をみるとさりちゃんの部屋の電気は消えていた。
まだ帰ってきてないらしい。
カラオケで気分を上げてはしゃぎすぎた僕は、疲れて眠りについた。
いつもさりちゃんが帰って来てから眠るのに、今日はどうも体がいうことを聞かない。
夢の中でさりちゃんが僕の部屋でなにか騒がしくしていた。
でもそれはやっぱり夢で、目が覚めて僕の部屋で騒いでいたのは姉貴だった。
「ねえ!純!純ってば!起きて!」
「何だよ…。」
「さりな友達出来た?」
「は?知らないよ。なんで?」
「駅を女の子と歩いてたんだけど。」
「嘘?友達出来たなんて聞いてないけど。」
「そっか。スーツ着た女の子と歩いてたんだけどね、純とかさりなとかとタメくらいに見えたんだよね!あんたずっとさりちゃんに友達が出来ないとか悩んでたから、出来たのかと思っちゃった!」
姉貴の話を聞いて思い出したのはあの不審な女だった。
確かに僕らの町に用があるような雰囲気だった。
まさかさりちゃんに用があったのか。
僕は少し不安になった。