君想い【完】
キャバクラや風俗は裏で危ない人たちと繋がっているとか聞いたことがある。
もしかしてさりちゃんに何かあったのか。
不安と恐れが止まらなかった。
「ちょっとさりちゃん家行ってくる!」
「こんな時間に迷惑でしょ!」
そんな姉貴の言葉を振り切って僕は玄関ではなく、ベランダに飛び出した。
よくこのベランダから僕がさりちゃんの部屋へ行ったり、さりちゃんが僕の部屋へ来たりしていた。
毎回その度にお互いの家の親から怒られた。
思い出すと懐かしい。
小さい頃が軽かったし、家もまだ新しいかった。
でも今は体もでかくなって、家も古い。ベランダがものすごく軋む。
電気の着いている部屋のドアを叩くと、化粧のしていないありのままのさりちゃんが窓に映る。
「純?」
「開けて!」
少し眠たそうな目を擦りながらドアを開けてくれた。ゆっくりと開くドアがすごくもどかしい。
早く不審な女の事を聞きたくて焦っていた。
「どうしたの?寝ようとしてたんだけど…」
「今日誰か女の子と会ってなかった?」
「え?なんで?」
明らかに動して肩が竦んだ瞬間を僕は見逃さなかった。
「僕、駅前のカラオケ行った時、スーツ女に中町はどこ?って聞かれたんだ。そしたら姉貴がスーツ着た女と歩いてるのを見たって言うんだ。誰?」
「え?友達だよ!友達。」
「その女の周りにいた人達がすごく怪しい人たちだったんだ。なんなの?あの子!」
「ただの友達だって!」
「嘘だ!」
「嘘じゃないって。もう今日疲れてるから帰って!」
思い切りドアを閉められた。
感情を表に現さない、
むしろ感情のないさりちゃんが怒ってるのを久しぶりに見た気がする。
しつこく聞いてしまったのを少し後悔した。
けど、
危ないことに巻き込まれているのかもと考えるとすごく不安になる。
後悔と不安が頭の中を何周もする。
こんな夜はとてもじゃないけど眠れない。