君想い【完】
ベットの横にある椅子に腰を掛け、僕はゆっくりと話始めた。
「僕は思い出話とかは祥吾と話さない。だって祥吾とはケンカばっかしてたしね。」
確かに。
と言いながらゆかが後ろで頷いていた。
「でもここで誓うよ。祥吾がさりちゃんを守ってきた3年間を無駄にしたりはしない。僕がさりちゃんを今以上に守る。祥吾が戻ってくるまで。祥吾の分まで僕が守るよ。だから早く戻ってきて。またケンカしよう。」
祥吾が戻ってくる可能性なんて今の医学じゃ5%もないだろう。
でも僕たちがここで信じてあげなかったら、
誰が祥吾の奇跡を祈ってあげるんだ。
誰が祥吾を守ってあげるんだ。
「さりちゃん。おいで。」
僕が座っていた椅子にさりちゃんを座らる。
祥吾の手を握り、自分の頬に手をあてた。
「祥ちゃん、祥ちゃん?手握り返して。いつもみたいに強く握って。祥ちゃん、いつもこうやってほっぺに手をあてて、大好きだよって。さりな、大好きだよって言って。ねえ、もうケンカしない。くだらない事で怒ったりしないよ。だから、だから、なんか言ってよ。祥ちゃん!ねえ、祥ちゃん!」
祥吾の体が激しく揺れる。点滴が外れそうで僕はさりちゃんの手を引き、椅子から立ち上がらせた。
「さりちゃん!」
「ねえ、純!なんで?なんで祥ちゃんなの?ねえ、なんで?純、どうして?あたしなんかした?祥ちゃんがさりな大好きだよって言ってくれない。純!ねえ!」
さりちゃんの意識が定まっていない。
祥吾が脳死判定が出たことを分かってる言い方をすれば、
なんでこんな事になったのか問いかけるときもある。
昨日も家に帰ってからずっとそうだった。
認めたくない自分がいるから、事実を否定しようとする。
腕を捕まれてフラッシュバックした後と一緒だ。
嫌な事は自分の頭の中から消そうとする。