君想い【完】
冷たい風が涙で濡らしたさりちゃんの頬をさらに冷たくする。
冷え切る体を強く強く抱きしめる。
「分かってるんだよ。祥ちゃんはもう…。でも頭が今の状況に着いて行かないの。」
「さりちゃんが一番祥吾を信じて待っててあげなきゃいけないんじゃないの?誰よりもさりちゃんが祥吾を想ってあげなきゃいけないんじゃないの?」
僕の腕の中でさりちゃんが強く頷いた。
学ランを強く握り必死に泣くのをこらえている。
「あたしは祥ちゃんを待つよ。」
顔を上げたさりちゃんを見て僕は言葉を止めた。
僕の目の前にいるのは誰?
この子は誰?
「さりちゃん?」
「何?」
「笑って?」
さりちゃんが白い歯を見せる。
「ねえ、さりちゃん笑って?」
「笑ってんじゃん。にー!」
目が、
目が死んでる。
輝きがない。
希望もない。
そんな目をしている。
さりちゃん。僕が守るよ。
祥吾の分も。
いつかまた笑顔を取り戻してくれるなら
僕は何でもするよ。