君想い【完】


「麗はなんでさりなに協力しようと思ったの?」


香代の真剣な目を久しぶりに見た気がする。

まっすぐ麗を見て目を離さなかった。


「さりなと同じよ。東龍が憎いの。潰してやりたいの。」

「なんで憎いの?」


麗は立ち上がって、
たくさん本の並ぶ本棚からアルバムを取り出した。

ガラスの机の上に広げ、ページをいくつかめくりだした。


「あたしのおじいちゃん。知ってると思うけど、東龍に殺されたの。」


ピンクのワンピースを着て、
おじいちゃんに抱きかかえられている小さい頃の麗の写真だった。


またページをめくると、
制服を着た麗だった。

日付を見ると、4年前。

中学生の時だ。

制服を着ている麗の隣りには、
細身で背の高い男の人。

切れ長の目に、栗色の流した髪。
少し焼けた肌に、長い足。

黒のスーツが似合う美男子だった。


「あたしの許嫁。稲葉馨。3年前から東龍に監禁されてるの。殺されてないだけましだけど。」

「許嫁?麗は好きなの?」

「うん。心から馨ちゃんを愛してるよ。だから憎いの。」


麗はいくつもある、稲葉馨という人と撮った写真を眺めていた。

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