君想い【完】


「中澤はどうするの?」

冷たい視線を浴びながら、教室でトシが進路調査書を広げていた。


さりちゃんは苦笑いをして、進路調査書を見た。


「あたしは、就職する。今の気持ちのままじゃろくに勉強出来ないし。お金貯めて祥ちゃんの入院費用を払いたいし。トシは?」


トシはさりちゃんの話を聞きながら、ペンを回した。


「俺は専門行く。」

「美容学校?」

トシが頷くと、さりちゃんは
あたしの髪も切ってね。


と笑って答えた。



さりちゃんの笑顔を見て、冷たい視線を送っていた連中は驚いていた。



見たことないような、花の咲いた笑顔。

でも水を与えることをやめてしまえば、
今にも枯れてしまいそうな笑顔だった。



だから僕たちは花に水をやり続ける。

花を枯らさないために、
花を咲かし続けるために、

水を与え続けなければいけない。


「香代も美容学校行くって言ってたね。メイクの仕事に就きたいって。同じ学校行くの?」


「たぶんね。」


照れ臭そうに笑うトシが僕には可愛く見えた。


「何照れてるの?気持ち悪い。」

「あっ。中澤だ!」


昔と変わらない、やり取りにトシも喜んでいた。


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