君想い【完】
「中澤さん、大丈夫?」
その言葉を耳にして僕は教室を飛び出した。
目の前には額から血を流して座り込むさりちゃんの姿。
消火器入れにぶつけてしまったのだろう。
「ふざけんじゃねえよ!この売女!」
「売女じゃないし。」
「誰の男と寝たんだよ!」
「寝てないんだけど。」
「なんなの!その態度!まじウザイ!」
「あんたあの男の彼女なの?あいつ彼女いないって言ってたよ。」
冷静なさりちゃんの言葉に女は血相変えて走りだした。
さりちゃんが立ち上がると周りにいた人たちは一斉に引き出した。
大丈夫?と聞いていたさりちゃんの友達でさえ。
「さりちゃん!血出てるよ。保健室行こう!」
僕はさりちゃんを無理矢理連れ出した。
周りのあの凍るような冷たい目にさりちゃんをさらしたくなかった。
そんなことがあってもさりちゃんは泣かない。
どこか遠くを見るような目で、
僕にありがとう、と言った。
もう死んでいるかのような目で。
最初は先輩の男をとった女、という噂だった。
しかし噂はひどいもので、エスカレートしていき悪化した。
援交してる。
風俗で働いている。
誰とでもやる。
僕は全部信じなかった。
だってさりちゃんはそんな事する子じゃない。
そんな事できるような子じゃないから。