叔母さんとみかん畑【完】
『あ、ら?り、く君とこ、はるじゃない?』


途切れる叔母さんの透き通った声に我慢していた涙が漏れた。


『わ、たしね、叔父さんにむか、えにきて、って毎晩、おね、がいした、の。みかん、ばたけそ、だてたから、って』


『そし、たら、や、っとむか、えにきて、くれたみた、い』


『みかん、ばたけの、いい、にお、いがする、ねぇ…』

叔母さんは泣きながらその言葉を言った。


俺は今起きている事が全く理解できずに固まっていた。


『陸、くん、こ、はる、幸せに、なり、な、さいね』

言い終わった瞬間に「ピー…」と機会音が病室に響いた。


『…え?叔母さん?叔母さん!?いかないでよおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』


僕らの願いはかなわなかった…。



それから、数日がたち叔母さんの葬儀が行われた。

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