*花は彼に恋をする*【完】

「……翔英さん!?
あの…ここ…外ですよ!?」

大好きなこの腕に抱き締められて

本当は凄く嬉しいけど

まだ明るい時間で

ここはホテルの庭であり

今は私達しかいないけど

観光客も普通に通るような場所。

ついこの間醜態を晒した私が

こんな恥ずかしがるのもなんだけど

誰かに見られたらやっぱり恥ずかしい。

それに

私があの時赤羽に発言した事に対して

翔英さんがなぜ悔やむのかも

いまいちわからない…。

しかし、彼は離すどころか

「…構うもんか。」

と、抱き締める力が強くなり

私の顔は彼の胸に

ピッタリとくっついた。

「…翔英さん?」

呟いても彼は黙ったままだけど

シャツから彼のコロンの香りがして

彼の心臓の音が真近で

ドクンドクンと聞こえて

彼の指が私の髪の間に差し込まれて

梳くように撫でられた私の心臓は

飛び跳ねそうなほどドキドキしていた。


しばらくして

「…玲花、良く聞いておけよ。」

翔英さんが口を開いた。

私は少しだけ顔をあげると

彼の漆黒の瞳が私を見つめた。
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