*花は彼に恋をする*【完】

***

温かくて、心地よくて

ぼんやりとしている頭の中で


『…玲花。』


私の大好きな声が微かに聞こえた。


………翔英さん?


その時、スッと

手が持ち上げられたような気がした。

…うん?

誰か私の手を取ってキスをしてる?

指を絡めてる?

髪を優しく撫でてくれてる?

扱う手つきは優しくて

でもくすぐったいような違和感に

私の瞼が少しずつ開いていく。

うん?

あれ…ここは…。

まだぼんやりとする

定まらない視界の中で見えたのは

翔英さんがバスローブ姿で

私の横に座り

私の髪を撫でながら

優しく見下ろしている光景だった。


「………翔英さん?」

ぼんやりしながらも

彼の顔をハッキリ視界に捉えた私に

「…おはよう…玲花。
体……辛くないか?」

そう口を開いた彼の表情は

穏やかそうで優しかった。

…でもしばらくすると

少し心配そうな瞳で

私の髪を梳くように撫でていた。



< 144 / 157 >

この作品をシェア

pagetop