*花は彼に恋をする*【完】

「…うっ…ううっ…。」

取り残された私は泣き続けた。

元彼に見捨てられた事も悲しかったけど

元彼の言葉を認めたくなかった事も

元彼を知らず知らずに裏切って

溝を深めて、傷つけていた事も

心にグサグサと刺さって痛かった。

でも元彼が私に言った

『…祝って貰えよ。』って言葉は

何だかもっと痛い気がした。

そんな事が叶うわけがない。

だって、あの人は私の事なんて

何とも思っていない。

雲の上の人だと言ってもいいと思う。

数年前…確かに

私はずっとあの人に憧れを抱いていた。

私を庇って助けてくれたあの人に。

でも、あの人はもう私の上司じゃない。

それにあの人は

多分他に好きな人がいるはずなんだ。

恋人がいるはずなんだ。

私はこの耳で聞いてしまったんだから。


だから私は片思いにピリオドを打って

封印して諦めたのに…。

元彼にキス以上を求められる度に

抱かれる事を拒み続けたのは確かだ。

私は無自覚だったけど

元彼から見て私が今でも

あの人を想っているかのような

そう言う態度をとっていたのだったら

申し訳なかったと思う。



元彼はそんな私が許せなくて

かさぶたを剥がすように

あの人を話題を出して

私の前から去った。



元彼には本当に申し訳なかった。

抱かれる事に応えてあげられたら

私達は今でも続いていたのかな…?

私はあの人と

どうなる事も出来ないのに

なぜか抱かれる事を

反射的に拒む私がいた。




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