*花は彼に恋をする*【完】
元彼が私に言った

『あの人』の名前は

黒瀬翔英(くろせ しょうえい)

M製薬営業部営業1課課長。

年齢は36歳。

社内で一番の大所帯になる部署に

在籍していて、数年以内には営業部の

次期総合部長候補と言われている

有能な課長さん。

元は広報宣伝課(通称:報宣)の

課長代理だった黒瀬課長は

私の元上司だった。



出会いは、私が入社2年目の時だった。

黒瀬課長代理(当時)は

M製薬東京事業所営業課から

本社へ異動と共に

31歳の若さで

報宣の課長代理になった。

私より10歳も年上で

やや短髪に近い黒髪。

奥二重でシャープな目元。

その目元から覗かせる漆黒の瞳。

スポーツが大好きらしく

中学~大学の途中までは

陸上の国体代表になるまでの

成績を残していたらしく

やや小麦色の肌をして

長身で肩幅が広く

ガッチリした健康的な体格。

名前のようにスーツは

ほとんど黒に近い紺系統だったが

オシャレで良く似合っていた。

電話や来客の接客対応が

元営業とあって

渋みを含みつつも綺麗な口調で

会議の進行や書類作成も

凄く丁寧だった。

余計な事を話さない人だったけど

課長代理の分のお茶やコーヒーを入れて

デスクに置いた時に

「ああ….いつもすまないな。」

と、口角をあげて

優しい顔を見せてくれたり

書類を提出した時に

「良く頑張ってるな。その調子だ。」

と、言ってくれる

その顔を見るのが嬉しくて

その声をいつも聞いていたくなるくらい

私の胸が高鳴り

日々憧れが強くなっていた。


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