*花は彼に恋をする*【完】
私はハンカチで目頭を押さえた。
優しい言葉に胸が熱くなり
別の意味でまた泣きそうになる。
でも、ハンカチで押さえながら
「…すいませんでした。
お騒がせしたうえに
皆の前で庇って頂くような事を
言って頂いて…。」
と、やっとの事で出た
謝罪とお礼をポツリと呟くと
「…別に礼には及ばないし
当たり前の事をしただけだ。
それに、君が騒がせた訳じゃないから
誤解しなくていい。
別に俺は迷惑に感じてないし
あんな事じゃ
報宣はダメになると実感したから
俺が雰囲気を変えられるように
改革していってやるよ。
…だから、もう泣きやめ。」
そう言って黒瀬課長代理は
スーツのポケットに手を入れると
「…ほら、野田。
これでも飲んで一息つけ。
落ち着いたらでいいから
気にせずに
普通にオフィスに戻って来い。」
と、言って
カフェオレの缶を取り出すと
私の手に握らせた。
「…あっ、ありがとう…ございます。」
顔を見上げてお礼を言うと
「…野田は十分可愛げがあるから
泣かずに自信もてよ。」
と、言った黒瀬課長代理は
私の肩を優しくポンポンとすると
背を向けて廊下を歩き
オフィスへ戻って行った。