*花は彼に恋をする*【完】
遠ざかっていく黒瀬課長代理の
背中を見送りながら私は
握らされたカフェオレの缶を見つめる。
わざわざ買ってきてくれたのかもね。
頬にあてるとヒンヤリと気持ちいい。
『…辛かったな。』
『…お前の頑張りは
良くわかってるから。』
黒瀬課長代理は
ちゃんと見ていてくれていた。
口数が少ない人なのに
皆の前で大声をあげてまで
私を庇ってくれた。
私を助けてくれた。
そして、わざわざここまで来て
優しい言葉をかけてくれた。
そして、このカフェオレも
わざわざ私の為に買ってきてくれた。
黒瀬課長代理は普段
コーヒーは微糖ブラックで
こんなにミルクたっぷりでは
飲む人じゃない。
…黒瀬課長代理。
ありがとうございます…。
さりげない優しさに
じんわりとした安らぎを感じ
私はカフェオレの缶を愛おしげに
ギュッと握った。
そして
『……好き。』
心の中で一言呟いた。
私はこの時から
黒瀬課長代理に
強い憧れと恋心を抱き始めた。
と、同時に
切ない恋の始まりにもなった。